【意外と低リスク】実はそんなにハードル高くない弁理士の独立・起業
弁理士の資格を持っている方やこれから取ろうと思っている方の中には、独立・起業について考えている方もいるのではないのでしょうか。士業といえば独立しやすい職業ですもんね。
また、最初は独立なんて考えてもなかった方でも、何かの縁で独立した方が良いのかなと考えたりする人もいらしゃるかもしれません。
私も資格を取った時は独立なんて微塵も考えていませんでしたが、なんやかんやあって独立することになりました。何がキッカケとなるか人生分かりません。
とはいえ、独立って聞くとハードル高いですよね。
確かに世間一般でいう独立は、事務所を立ち上げ、営業して顧客を獲得し、経理や事務もこなす、というイメージなので自分には無理だなと思ってしまいます。
でも実はそこまでハードル高くない独立の形態もあります。
今回はそんなハードル高くない系の独立について解説したいと思います。
実はハードル高くない弁理士の独立・起業
独立の定義にもよりますが、ここでは雇われない=独立として解説します。
その意味では、弁理士の独立の形態は1つではありません。
詳しくは後述しますが、弁理士の独立の形態は、大きく分けて「完全独立型」と「半独立型」があります。今回は、そのうちの「半独立型」について下記のような流れで解説していきます。
・弁理士の独立の形態
・ハードル高くない形態「半独立型」
・半独立型のデメリットと注意点
・半独立のための準備
私自身「半独立型」で独立しており、メリットだけでなくデメリットや気を付けた方が良いと思うことをいくつか経験していますので、良い面・悪い面の両方をお伝えできればと思っています。
弁理士の独立の形態
完全独立型
一般的に独立というとこちらになると思います。
事務所を立ち上げ、テナントを借りて設備一式を導入し、クライアント候補へ営業をかけて仕事を獲得し、獲得した仕事を仕上げて納品し、請求書発行や経理業務などの事務作業もこなす、といった一連の仕事を自分でやるスタイルです。
何から何まで自分で決めるので、完全に自由ですし、収入も仕事量に応じて増えます。
その反面、顧客が獲得できないと無収入ですし、テナントや設備のコストも自腹です。また、案件の数が増えると事務作業の負担も捨て置けません。
弁理士の仕事は、一旦顧客を獲得できれば継続性が比較的高いのですが、最初の顧客を獲得するのがなかなか大変です。顧客も立ち上げたばかりの事務所よりも実績のある事務所の方が信用できますからね。
また、弁理士をしている方の特性として、一山当ててガッポリ儲けたい!という人よりも、ほどほどに安定して収入を得つつ自由を得たい、と思っている人が多い傾向があるような気がしますので、どちらかというとデメリットとして挙げたような顧客獲得の不確実性やコスト負担をリスク視されるのではないかと思います。
そういう意味では、完全独立型は魅力的な部分もあるがリスクが高く、なかなか踏み切れないと思います。
半独立型
上記の完全独立型に対し、半独立型という独立の形態があります。
半独立型は、完全独立型の一部のみ自己負担で、他の部分を既存の事務所に頼るスタイルです。
どの部分を自身でやって、どの部分を事務所に頼るのかは様々なパターンがあると思いますが、ここでは、ミニマムケースの一例として、在宅で事務所から業務委託で仕事をもらうパターンについて解説します。
コロナを機に、リモートでのコミュニケーションが一般化しましたので、在宅で起業しやすい環境となりました。私も完全にリモートで仕事をしています。
半独立型は、完全独立型ほど稼げませんが、比較的リスクは低いと思います。
ハードル高くない半独立型
半独立型(在宅で事務所から業務委託で仕事をもらうパターン)がハードル高くない理由は主に下記です。
・営業が不要
・事務所が不要
・必要設備が少なく済む
・事務作業が楽
営業が不要
まず、営業不要について。
事務所からの業務委託という形で仕事をもらうため、クライアント企業へ直接営業する必要がありません。
これは独立したてでかつ小規模の場合に大きなメリットになります。
知財の仕事は単発で終わることが少なく、継続性があるものですので、それになりに長い付き合いとなります。また、もちろん専門性の高い仕事です。
そのため、企業側も信頼できる事務所として、実績のある事務所を選びたくなるわけです。言い換えると、弱小で独立したての事務所は選ばれづらいです。
その点、事務所からの業務委託の場合は、事務所との付き合いとなりますのでハードルはかなり下がります。例えば、その事務所の所長やパートナーが知り合いであれば、比較的簡単にトライアル案件をもらえたり、そのまま継続してお仕事をもらえたりします。
事務所が不要
次に事務所不要について。
在宅で仕事ができる場合は事務所としてテナントを借りる必要がありません。
知財の仕事は、リモートワークと相性が良く、私が企業知財にいた頃にコロナが流行しリモートワークになりましたが、業務は全く止まらず、むしろ加速した印象すらあります。
ちなみに弁理士の仕事とリモートワークの相性については下記記事で解説していますのでご興味があればご覧ください。
もちろん事務所も同様で、打合せでクライアントを訪問することなく、Zoom等のツールを用いて打合せができます。
さらに、在宅の場合、自宅の賃料の一部を経費として計上することもできます。なお、半独立の場合の経費などについてはまた別途まとめて記事にしたいと思っています。
必要設備が少ない
また、半独立の場合は必要設備が少なく済みます。
例えば、完全独立の場合は、案件情報を保存するためのサーバや紙の場合は書庫、それらサーバや書庫のための部屋、案件情報を管理する情報システム、作業用パソコン、電話、作業机やイス、訪問客に備えたテーブルやイス等のような設備が必要となります。
他方で、在宅での半独立の場合は、最低限パソコンと電話があれば事足ります。(個人的には電話も最早不要と思いますが、顧客によっては問い合わせを受ける場合に必要になることもあります。)
机やイスは既にあるものを使えばよいですからね。利益が出てきたら良いものに変えていけばよいと思います。
このように設備が少ないため、初期投資が少なく済み、リスクを抑えることができます。
事務作業が楽
独立前後で最も異なるのが事務作業の多さです。
特に、見積書・請求書の発行、入金確認、資金管理、経理作業は、サラリーマンで弁理士をしていると触れる機会はほとんどないと思います。なので、ここにハードルの高さを感じる方もいらっしゃるかと思います。
ところが弁理士の仕事の場合、比較的単価が高いため、これらの事務作業の発生頻度は低めです。
また、慣れてしまえば、これらの事務作業はただのルーティンワークであり、ある程度形式化したりツール化すればそれほど手間もかかりません。
そして、半独立の場合は、サービスを提供するクライアント企業が異なっても事務作業の相手は同じ事務所ですので、やる事はほぼ変わりません。
半独立型のデメリットと注意点
もちろん半独立型にもデメリットはあります。
・単価が低め
・取引先に振り回される
単価が低め
半独立型では、事務所から仕事をもらうスタイルなので、クライアント企業からの報酬から一部が割り引かれて還元されることになります。
そのため、完全独立型と比べて単価は低くなります。
これは、事務所や完全独立型では、設備や人員といった経費がかかっていますので、その分を回収するためであり、当然といえば当然ですね。
ただ、還元率は取引先の事務所との契約で決まりますので、上手く交渉する必要はあるかもしれません。
取引先に振り回される
取引先の事務所とは、雇用関係ではないものの、かなり密接な関係になります。
例えば、納品方法や請求方法などの事務手続きから納品物の種類や形式に至るまでの様々な事項について、事務所のやり方に合わせることになります。
そのため、体制や仕組みがしっかりしている事務所であればあまり問題がありませんが、そうでない事務所の場合は内部的事情の影響を受けやすくなります。この場合、実務よりも事務作業やコミュニケーションにかかるコストが高くなりがちで、時間がかかるだけでなくストレスにもなります。
半独立のための準備
ここまで半独立型のメリット・デメリットを解説してきましたが、最後に半独立のための準備についてお話したいと思います。
完全独立型と比べて、半独立型は、自分一人では成立しないので、どこかの事務所と手を結ぶ必要があります。そのため、完全独立型とは異なる準備が大事になります。
その準備として最も重要なのは、取引先となってくれそうな事務所の関係者とお付き合いしておく、ということです。要はコネを作っておくことですね。
また、単なる知り合いレベルでは取引先にはなってくれません。事務所も実績を積み重ねて信用を蓄積していますので、その信用を維持・向上できそうな人でないと依頼しにくいわけです。なので、地道にスキルを伸ばしつつ、アピールする必要もあります。
普段の仕事やコミュニケーションの積み重ねが重要ということですね
このように、半独立といっても準備は必要になります。準備については営業も絡むため、別の記事としてまとめて整理したいと思います。
まとめ
今回は、半独立型は意外とハードルが高くないことについて解説しました。
デメリットもありますが、それを許容できる方には完全独立型よりはリスクが低いのでおススメです。
とはいえ、思い立ってすぐに半独立できるかというとそうでもなく、ある程度の準備は必要です。
私自身、資格取得当初から独立を考えていたわけではなかったのですが、振り返ってみると半独立の準備につながることがあったのだと再認識しました。
なので、今は独立とか考えていなくても普段の仕事ぶりを良くしていったり、コミュニケーションを少しだけ取るようにしてみたりすることは、将来役に立つかもしれません。
独立についてぼんやりとでも考えている方に少しでも参考になれば幸いです。
ではでは。
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