【一攫千金!?】個人で特許を取るメリットとデメリット

おはこんばんちは。りってるです。

 

たまに個人で特許を取ることについて質問されたりすることがあります。

 

特許があれば何もしなくても儲かるんでしょ?

売却したら一攫千金!?

 

みたいなイメージで質問されることが多いですw

 

結論から言うと、個人でも特許で儲かる可能性があるのはホント。

でも、デメリットも大きい、です。

 

詳しく解説していきます。

 

 

目次

個人で特許を取るメリットとデメリット

 

特許は企業が保有しているイメージですが、もちろん個人でも取ることができます。

 

企業にとっての特許

企業が特許を取る主な理由は下記です。

・自社の事業を守る

・他社を市場参入を防止する

 

ピンときた人もいるかもしれません。

そうです、特許は事業をしていないと持っていてもあまり意味がないんです。

 

しかし、事業をしていなくても特許を使って収益を上げている企業もあります。

いわゆるパテントトロールというやつです。

 

パテントトロールの手口は、ターゲットとなる企業の事業に当たりそうな特許を買収し、それを使って企業に特許権侵害による損害賠償を要求します。

彼らは基本的に自分たちで特許を取ることはありません。

 

個人にとっての特許

企業と同様に、個人も事業をしているか否かで特許の使い方が変わります。

 

それと共にメリット・デメリットも変わります。

というより、事業していない人はメリットを享受するためにデメリットが増える形になります。

 

共通するメリット・デメリット

まず事業有無にかかわらず共通するメリット・デメリットです。

 

共通のメリット

・特許のライセンス、売却で利益になる(※条件付き)

・特許表示で個人をアピールやブランド化できる

 

共通のデメリット

・取得コストが個人にとっては多額

・特許の維持費もかかる

 

共通点についてはどこかで聞いたことあるような内容だと思います。

しかし、利益になるかどうかが条件付きであったり、維持費がかかる点などは知られていないかもしれませんね。

 

個人事業者のメリット

これに加えて、個人事業者は追加メリットがあります。

・個人事業者は大企業との提携・事業売却につながる

・融資を受けやすくなる(かも)

 

事業売却ができれば個人としては一攫千金になると思います。

 

事業者でない個人のデメリット

反対に、事業をしていない人は追加デメリットがあります。

・特許があっても自動的にはお金は入ってこない

・お金を取るのにお金がかかる

 

お金を取るのにお金がかかる、と言われると何だか詐欺商品みたいですね・・・

 

それぞれについて詳しく解説していきます。

 

共通のメリット

 

まず事業有無を問わず共通のメリットについて解説します。

 

特許のライセンス、売却で利益になる(※条件付き)

特許権はその発明を独占的に実施(使う)できる権利です。

そのため、勝手に実施した人に損害賠償を請求したり、実施を差し止めることができます。

 

そして、この権利は他人に実施を許諾したり、権利自体を譲渡することができます。

 

なので、この特許の発明を実施しようとしている=事業で使おうとしている会社は、その特許権がないと安心して事業できないわけです。

そのため、その会社は特許権を持っている人から許諾を得たり、権利を譲渡してもらったりすることになります。

その際にお金がもらえます。

 

特許表示で個人をアピールやブランド化できる

特許を保有している人は特許表示することができます。

 

簡単に言うと、「番号○○の特許持ってます」とアピれます。

 

個人で特許を持っている人は珍しいのドヤ顔ができますw

事業を持っている人は自分の技術力や自分の事業の優位性や先進性をアピールすることができます。

 

国家が認めているものなので信用力があり、アピールやブランディングに使える可能性があります。

 

共通のデメリット

 

次に共通のデメリットについて解説します。

 

共通のデメリットは特許にかかる費用です。

これが意外とかかります。

 

特許にかかる費用は大別して取得費用と維持費用の2つがあります。

 

取得コストが個人にとっては多額

特許は特許庁に書類を提出し審査を経て取得できます。

このプロセスで結構お金がかかります。

 

まず、書類作成。

書類作成は代理人(弁理士)に依頼することがほとんどです。

なぜなら書類作成の難易度が高いから。

 

法的なフォーマットにしたがって、法的な要件を満たすように、かつなるべく広い権利が取れるような文章表現を検討して作成する必要があります。

 

良い書類を作成するには訓練が必要ですし、ベテランの弁理士であっても難しい場合もあります。

 

この書類作成の相場は案件にもよりますが大体20~30万です。

 

次に、出願&審査請求料

書類が作成できたら出願ですが、ここでは出願料&審査請求料がかかります。

 

出願料は特許庁に書類を提出するときの費用です。

これはまあ分かりやすいと思います。

 

他方で、審査請求料ってなんだ?と思われるかもしれません。

日本では出願しただけでは審査は行われず、審査請求をしないと進みません。

これは、出願したけど事業の方向性変わったのでやっぱ辞めたとなった場合に費用を抑えることができることを趣旨としたものです。

 

この出願+審査請求で大体1万+15万=16万程度かかります。

(ただ個人だと減免が受けられる可能性はあります)

 

特許庁との応答にかかる費用

審査請求すると、審査結果が特許庁から送られてきます。

 

多くの場合、一発で特許になることはなく「こういう理由で特許にできません」という通知がきます。

これが拒絶理由通知です。

 

このままでは特許にならないので、書類を修正(補正)して再度特許庁に審査を求めます。

これがいわゆる中間処理です。

 

この書類の修正もやはり素人では難しく、代理人に頼むことになります。

そして、それに対し手数料が発生します。

 

手数料は代理人によって異なるため一概に言えませんが、だいたい5万~10万くらいかかると思います。

 

なお、この中間処理は複数回発生することもあります。

そうなると発生回数ごとに手数料がかかります。

 

特許の維持費もかかる

晴れて特許になった!あとはお金をもらうだけ!

と喜んだのもつかの間、特許になった後も実はお金がかかります。

 

特許権は維持するのにお金がかかります。

これは特許庁に対して払う費用になります。

維持年金と呼ばれるように、毎年かかる費用になります。

 

特許権の有効期間は出願日から20年ありますので、期間満了まで払い続ける必要があります。

 

結局どれだけかかるのか?

費用について長く書いてしまったのでうんざりした人もいるかもしれませんw

 

結局どれだけかかるのか?

ざっくり計算で

・出願から特許になるまで約50万(41万~56万)

・特許になった後から権利期間満了まで約90万

 

どうでしょう?

個人では萎える金額ですよね。

 

 

個人事業者のメリット

 

続いて個人で事業をしている人のメリットを解説します。

 

個人事業者は大企業との提携・事業売却につながる

自分の事業が大企業から注目されることがあります。

例えば、大企業はブランド力があるがゆえに失敗のおそれがある新規事業には慎重です。

 

そこで、狙っている事業をしている企業や個人をサーチします。

最初から個人をサーチ対象とすることは珍しいかもしれませんが、その分野の第一人者として認められている場合は対象となり得ます。

 

そして、市場が拡大することが見込める場合、提携や買収を持ちかけます。

 

このとき、特許があると第一人者として認められやすくなります。

さらに、提携条件や買収金額の交渉を有利にすることができます。

(提携だと法人化を求められるかもしれませんが)

 

融資を受けやすくなる(かも)

また、事業の融資を受けられやすくなる可能性もあります。

 

銀行から融資を受ける場合には、担保が必要となります。

通常であれば、土地・建物・有価証券など。

 

最近の動きでは特許権も担保になる可能性があります。

例えば、下記のように金融機関に対する調査結果が出ています。

今後重点を置きたいと考える(②)のは、「事業性を評価した担保・保証によらない融資」が最も多く、次いで「売掛債権の流動化による融資」「動産担保による融資」が続き、さらに若干の差で「知的財産担保による融資」が続いています。

日本弁理士会 特許などを担保とした融資の状況など

 

例えば、みなと銀行では知財権を担保とした融資も行われているようです。

お客さまの多様な資金調達ニーズにお応えするために、みなと銀行では、従来の不動産担保に代わり、特許権や著作権等の知的財産権を担保とする融資をお取扱いしています。

みなと銀行 知的財産権担保融資

 

ただ、知財権の価値の算定はなかなか難しいため、あてにし過ぎない方がよいかもしれません。

 

事業者でない個人のデメリット

 

最後に、事業をしていない人が特許をもつ場合のデメリットを解説します。

 

特許があっても自動的にはお金は入ってこない

「特許を持ってたら儲かるんでしょ」と思っている人には悲報です。

 

残念ながら自動的にはお金は入ってきません。

 

特許権は基本的に、持っている側が実施している相手を探してお金を払えと言わないとお金を取れません。

 

まれに実施前に特許をサーチして自らライセンス契約を申し込んでるくケースもありますが、それは特許権を持っているのが大企業である場合がほとんどです。

特許権者が個人だとまず軽視されます。

 

なので、自らサーチしてお金を取りに行くことが必要です。

 

ただ、このサーチが難しいのです。

実施しているかどうかを見極めることはプロでも難しいです。

 

理由は、主に下記2つです。

・企業活動は営業秘密であることが多いので全貌は開示されていない。

・企業活動が持っている特許に該当するか否かの判断が難しい。

 

特許になるような話は営業秘密レベルなので一般にアクセスできる媒体で公開されていることはありません。

 

また、自分が持っている特許の内容を企業が実施しているかを判断することはプロ(弁理士、弁護士、知財高裁)でも難しいです。

 

お金を取るのにお金がかかる

さらに、悲報です。

 

仮に、サーチをして実施をしている企業を見つけたとしても、すんなりとお金をもらえるとは限りません。

 

皆さん、想定外のお金は払いたくないですよね。

払わずに済むようにしようとしますよね。

 

これは企業も例外ではありません。

 

さらに、個人 vs 企業となると圧倒的に個人が不利です。

最悪の場合は訴訟になりますが、訴訟には多大な費用がかかります。

個人ではその費用に耐えられないことが多いので諦めたり、資金が尽きて負けたりすると思います。

 

結論

個人で特許を取るメリットとデメリットを解説しました。

 

結論としては、

・事業をしている人は取るメリットあり。

・事業していない人は取るデメリットの方が大きい。

 

特許の趣旨は「産業の発展に寄与する」ことなので、事業者が優遇されるようになっています。

 

なので、事業をしていない人にはコストもかかる特許取得はあまりおすすめできないです。

 

この記事が特許取得を考えている人にとって何かの参考になれば幸いです。

ではでは。

 

 

2022年2月25日資格・知財業務特許

Posted by りってる