【転職前に知っておきたい】企業知財の仕事とは?~中間処理編~

おはこんばんちは。りってるです。

 

以前に企業知財の仕事の「出願編」を記事にしました。

 

出願はメインの花形業務です。

ですが、特許権はそれだけでは取れません。

仕上げていく業務が大事です。

 

今回は企業知財の仕事シリーズ第2弾として出願後の業務について解説したいと思います。

私は特許事務所や企業知財の経験がありますので、知財業界に興味がある人に生の情報をお届けできたらと思っています。

 

それでは解説していきます。

 

 

 

 

目次

企業知財の仕事とは

企業知財の仕事は多岐にわたります。

なので、前回に引き続き特許に絞ってお話ししたいと思います。

 

前回は下記の★の出願関連業務について解説しました。

・特許戦略立案
・発明発掘★
・先行技術調査★
・日本出願★
・外国出願★
・中間処理●
・特許リスク対策
・権利活用

今回は●の中間処理について解説します。

 

この段階では出願した内容を権利化していきます。

例えば、出願がパン生地を作成する工程だとすると
中間処理はパン生地を成型して焼く工程にあたります。

この中間処理が良い特許権を取るのに重要になります。

 

中間処理の流れ

 

中間処理とは特許庁とのやり取りです。

 

中間処理の典型的な流れは下記です。

 

まず、特許庁に出願したら出願の内容について審査されます。

特許要件を満たしているかどうかが判断されます。

 

特許要件とは、発明に新規性や進歩性があるか等です。

 

特許要件を満たすと判断されると特許査定が通知されます。

特許査定とは、「特許にします」という通知です。

これが通知されたら中間処理は終了です。

 

中間処理は見解の相違を埋める仕事

特許要件を満たさないと判断されると拒絶理由通知が来ます。

英語ではOA(Office Action)と呼ばれます。

(OAは拒絶理由通知以外も含みますが)

 

拒絶理由通知って言葉だけ聞くとギョッとしますよね。

日常生活で「拒絶」という言葉は使いませんから。

 

でも、拒絶理由通知は単に特許にならない旨とその理由を通知するものであって、それ以上の意味合いはありません。

あまりに拒絶理由が多いと萎えますけど…。

 

この通知を受けると、その理由が妥当なのかを検討します。

妥当であれば内容を修正して特許庁に応答します。

内容を修正することを補正といいます。

 

妥当でない場合は内容はそのままで特許庁に反論します。

反論の内容は意見書という書類で提出します。

 

なお、応答期間(補正や意見ができる期間)は法律で定められており、その期間にしか応答できません。

知財業界ではこういった法廷期限に追われることが多いです。

 

そしてまた審査に戻り判断されます。

基本的にはこの繰り返しです。

 

溝が埋まらなくても終了

延々と繰り返すことはできず、基本的には2往復でほぼ終了します。

 

終了の仕方は、下記2パターンあります。

・特許要件を満たすと判断されて特許査定となるパターン

・特許要件を満たさないと判断されて拒絶査定となるパターン

 

前者は目的達成での終了です。

後者は目的未達での終了、打ち切りみたいなものです。

 

後者の場合、別の制度(審判請求)を使えばまだ粘ることができますが、今回は割愛します。

 

OA応答が腕の見せ所

拒絶で終了しないためには補正や意見が重要になります。

 

ここで知財の仕事人としての力量が分かります。

最低限の補正や意見で自社事業をカバーできる権利範囲を勝ち取る。

これができる人はこの業界で食うには困らないと思います。

 

そのためには、事業部のニーズ、法律・技術・業界動向などの知識と、書類作成スキルが求められます。

サービス精神がある人、自己研鑽ができる人、新たな技術に興味を持てる好奇心がある人には向いていると思います。

 

 

 

中間処理の発生頻度

 

中間処理は日々発生します。

出願が多い企業では多いときは毎日ように通知がきます。

 

特にグローバル企業では外国にも出願しているので通知が多くなりやすいです。

理由は、中間処理は各国で発生するためです。

 

特許に関する特許法は各国で定められています。

なので審査も基本的に各国で行われます。

 

したがって、中間処理は出願数×出願国数だけ発生します。

グローバル企業だと米国は必須で、欧州や中国にも出すことが多いと思います。

そうなると日本も合わせて4か国となり、中間処理の数が概算で4倍になります。

 

同時多発的に中間処理が発生すると、期限に追われてヒーヒー言っていることもあります。

 

 

外国の中間処理

 

外国でも同様に中間処理が発生します。

流れも上記の日本のフローと基本的にはほぼ同じです。

 

ただ、外国の場合、2つのハードルがあります。

・言語的なハードル

・法律的なハードル

 

言語的なハードル

通知はその国の言語で書かれます。

また、応答するときもその国の言語で行う必要があります。

米国なら英語、中国なら中国語です。

 

これが仕事のハードルを上げてきます。

そもそも何言ってるか分からないんですよねw

英語はまだ分かりますが、中国語は雰囲気しか分かりません。

 

そのため、翻訳してもらったり、現地の事務所からのコメントを頼りに応答を検討することになります。

コメントは大体英語です。

なので英語は必須スキルになります。

 

知財業界で英語が必須ということは下記記事でも解説していますので、良かったら合わせてご覧ください。

 

法律的なハードル

特許法は国が定める法律です。

 

なので各国で特許法が異なります。

すなわち審査の仕方も異なります。

 

例えば、特許要件が異なります。

米国で特許になった出願であっても、中国で特許になるとは限りません。

 

このように各国の法律や審査の基準を分かっていないと特許を取ることができません。

 

ですが、すべての国の法律を余すことなく理解することは不可能に近いです。

なので、現地の弁理士・事務所と連携することが不可欠です。

 

あとがき

いいかがだったでしょうか。

今回は企業知財での中間処理業務について赤裸々にお話してみました。

中間処理は職人技的な要素もありますので奥深いです。

細かく話をするともっといろんな仕事やパターンがあるのですが、概要レベルでは説明できているのではないかなと思っています。

 

企業知財の仕事に興味がある方に少しでも参考になれば幸いです。

ではでは。

 

 

2022年2月25日資格・知財業務仕事,企業知財

Posted by りってる